アサーティブコミュニケーションという言葉を知っていますか。アサーション、もしくはアサーティブとはコミュニケーションスキルの一つで、自己表現の考え方とその手法です。
アサーティブなコミュニケーションとは、自分の考えや意見を自分自身が大切にして素直に率直に相手に伝えると同時に、相手の気持ちや考えも受け入れて耳を傾けるコミュニケーションのことをいいます。
つまりどういうことなのか?この記事では、アサーティブコミュニケーションについて詳しくまとめてみました。また、すぐ実践できるコツや事例も紹介していきます。
アサーションとは?

アサーティブなコミュニケーションが取れずに起こるトラブル
まず、あなた自身今までの人生の中で、以下のようなことを経験したことはありませんか?
- 人に対して自分の意見や気持ちをなかなか言えない。
- 自分より立場が上の人や年上の人、偉い人には何も言うことができない。
- 自分の都合や体調を優先したいのに、突然の誘いになかなか断れない。
- 自分が正しいと思うことは、相手へ配慮せず自分の意見を押し通す。
- 必要ないものでもセールスされると断れない。
- 商品を間違われたり、相手が間違っていてもハッキリということができない。 etc
このような人との関わりの中で起こるコミュニケーショントラブルは、自分の意見や気持ちが相手に伝わらないだけでなく、生活そのものの質も低下してしまうトラブルの元になり得ます。
アサーションを知ることによって、自分自身の表現の仕方を見直すきっかけとなり、どんな場面や相手でもよりよいコミュニケーションが取れるようになります。
自分のアサーション度をチェックしてみよう
あなたが普段どのようにコミュニケーションや自己表現をしているのかチェックしてみましょう。
- あなたは誰かにいい感じを持った時、その気持ちを表現できますか。
- あなたは、自分の長所や成し遂げたことを人に言うことが出来ますか。
- あなたは、自分が神経質になっていたり緊張しているときそれを受け入れることが出来ますか。
- あなたは、見知らぬ人たちの会話に気楽に入っていくことが出来ますか。
- あなたは、会話の場から立ち去ったり、別れを言ったりすることが出来ますか。
- あなたは、自分が知らないことやわからないことがあった時、そのことについて説明を求めることが出来ますか。
- あなたは、人に援助を求めることが出来ますか。
- あなたは、人と異なった意見や感じを持っているときそれを表現することが出来ますか。
- あなたは、自分が間違っているときそれを認めることが出来ますか。
- あなたは、適切な批判を述べることが出来ますか。
- 人から褒められたとき素直に対応できますか。
- あなたの行為を批判されたとき、受け応えができますか。
- あなたに対する不当な要求を拒むことが出来ますか。
- 長電話や長話の時、あなたは自分から切る提案をすることが出来ますか。
- あなたの話を中断して話し出した人に、そのことを言えますか。
- あなたはパーティや催し物への招待を受けたり断ったりできますか。
- セールスマンや店員からの強いすすめを断れますか。
- あなたが注文した通りのもの(料理や洋服など)が来なかったとき、そのことを言って交渉できますか。
- あなたに対する人の好意が煩わしい時、断ることが出来ますか。
- あなたが援助や助言を求められたとき、必要であれば断ることが出来ますか。
引用:『よくわかるアサーション 自分の気持ちの伝え方』平木 典子 P12-13
チェックしてみてどうでしたか?「いいえ」の数はいくつありましたか。判定の目安としては〇が多ければ多いほど、あなたはアサーティブなコミュニケーションが出来ていると言えるでしょう。(具体的には10個以上が理想です。)
まだ今の段階では〇が少なくても、この記事でアサーションを理解して実践していけば、変わっていくことができますよ!
本当の意味のアサーションとは?
アサーションを英和辞典で調べてみると、
assertion…主張、断言、自己主張、自分の意見をはっきり述べること。
引用:goo辞書
という訳が出てきますが、理想とするコミュニケーションの手法としてのアサーションはそれだけの意味ではありません。
自分も相手もお互いに素直に率直に自分の意見や気持ちを伝えあい、また、聴きあうという『自他尊重の自己表現』という意味があります。自分も相手も相互に作用しあう、コミュニケーションの手法です。
アサーションの視点で人間関係を考えると、まず自分のことを自分でしっかり考えます。と同時に相手への配慮も忘れない点にあります。
アサーティブコミュニケーションができるとたくさんのメリットがある!
自分もOK,相手もOKなアサーティブコミュニケーションはたくさんのいいことを生み出します。
- お互いに素直な気持ちや意見を表現できる
- コミュニケーションの後に爽やかな気持ちが残る
- 意見が異なっても、双方が納得できる結論が見つかる
- 違う意見を知ることで、自分の可能性が広がる
- お互いの深い理解に基づく人間関係が生まれる
- 一人で考えた時以上のよい結論が見つかる場合も
引用:『よくわかるアサーション 自分の気持ちの伝え方』平木 典子 P19
日本人にありがち!アサーティブではない自己表現のタイプは?

アサーティブコミュニケーションができるととてもいい人間関係や、コミュニケーションができることは最初にも述べましたが、なかなかできていないなぁ、という人も多いのではないでしょうか。私自身もそうでした。逆に、アサーションが出来ていなくて起こるトラブルのほとんどが自分にも当てはまることでした。
では、アサーティブではない自己表現には具体的にどういったものがあるのでしょうか。
- 非主張的【ノン・アサーティブ non-assertive】
- 攻撃的【アグレッシブ aggressive】
ノン・アサーティブな自己表現
非主張的な自己表現のことをいいます。自分の気持ちや考えをうまく相手に伝えられないタイプです。相手との関係を悪化させないように我慢したり、人が嫌がることや邪魔になりそうなことは決してやらないことが多いので、結果的にストレスの多い生活になりがちです。
ノン・アサーティブの傾向がある人は、自己否定的だったり、自尊心が低く、何となくいつも不安で緊張した生活になってしまいます。
アグレッシブな自己表現
ノン・アサーティブなタイプとは反対に、攻撃的な言動に出てしまう人もいます。このタイプは、自との意見や考えを軽視して、無意識のうちに自分の意見や考えを押し通し、自分の意見が結果となるように話を進めてしまいます。無意識に人を傷つけてしまうことも多いので、周りから敬遠されたり嫌われたりします。
自己表現の3つのタイプの特徴
ノン・アサーティブ | アグレッシブ | アサーティブ |
引っ込み思案 | 強がり | 正直 |
卑屈 | 尊大 | 率直 |
消極的 | 無頓着 | 積極的 |
自己否定的 | 他者否定的 | 自他尊重 |
依存的 | 操作的 | 自発的 |
他人本位 | 自分本位 | 自他調和 |
相手まかせ | 相手に指示 | 自他協力 |
承認を期待 | 優越を誇る | 自己選択で決める |
服従的 | 支配的 | 歩み寄り |
黙る | 一方的に主張する | 柔軟に対応 |
私はOKじゃない、あなたはOK | 私はOK,あなたはOKじゃない | 私もOK,あなたもOK |
アサーティブな人になるためのコツ

今日からできる、アサーティブな考え方を紹介します。
自分で自分の気持ちをはっきりと把握する…表現するためには自分で自分が何を考えているのか、どうしたいのかという自分の気持ちがわかっていなければ、相手に伝えたり表現したりできないのは当たり前ですよね。自分のことをしっかり知ることが大切です。
結果や周囲を気にしすぎない…他人や周囲の状況を気にしたとしても、どう受け止めるかは相手次第であり、自分でコントロールできません。失敗を恐れても仕方がないので、それよりもまず、自分の気持ちを伝えることに精いっぱいの努力をするべきです。
「アサーション」という基本的人権を使いましょう…アサーションは基本的人権の一つです。人間関係の中では様々な葛藤が生まれる場面が多々あると思います。「本当は、眠いのに断ったら相手に悪いかな」など…。そんな時は「自分がやりたいことを言うことは人権として許される」という原点に戻りましょう。
考え方をアサーティブに変えよう!…ものの見方、考え方がアサーティブでないと当然アサーティブな自己表現もできません。物分かりがいい人が好かれる、人を傷つけてはならない、大人は子どもよりもえらい、上司には従うべき、愚痴を言わずに努力した方がよい…。これらの思い込みはありませんか?自分の気持ちを自分自身でコントロールするのではなく、外的な基準に合わせて自分の気持ちや考えを、心の奥底に押さえつけてしまっていませんか。アサーティブな人は、まず自分の気持ちを大切にし、それを発することができる人です。
まとめ
いかがでしたか?
コミュニケーションをすることは、生きていくうえで誰もが必ず経験することになります。なぜなら人は一人では生きていけないからです。そのコミュニケーションが、自分の気持ちを素直に表現できずにほかの人や周りの状況を優先してしまっては、本当の意味での自分の人生を生きていないことになります。
アサーティブを知ることは、自分と他の人、とくに家族との関係をよりよくできるとっておきの方法だと思います。ぜひ、今日から、ちょっとした心がけや意識で変わることができるのでやってみましょう。